常に脳内で他者と闘っていたのをやめた話①

僕は負けず嫌いだ。

 

この負けず嫌いは、

中学、高校と思春期真っ盛りの時代に形成された。

 

 

大学を出て、社会人になった。

就職先は地元の銀行。

 

 

 

地元は狭い。

奥様A :「〜さんの息子さん銀行に就職したんだってねえ〜」

奥様B、C:「すごいわね〜」

 

なんて会話が、

SNSでつぶやいたのかと思うほどリアルタイムで広がってゆく。

 

地方は

順当で安定している(とされる)人生を歩むことに対する、

無言の圧力が、

妙に強い。

 

3ヶ月に渡る学校の授業のような研修を終えて

 

ようやく

 

支店に配属されて最初は「出納」という係になる。

いわゆるATMのお世話係だ。

 

そのほかは為替といって、

振込を処理するマシーンとなる仕事で、

今は事務センターというところに集約され

そこでまとめて処理されている。

 

そうしているうちに1年が過ぎた。

自分は一体何やってんだろうと思っていた。

 

 

僕は負けず嫌いだ

 

他者に対して少しでも優れている点を見出さねば気が済まなかった。

 

 

他人との違いを出せない単純な内部事務に嫌気がさして、

何か熱中できることはないかと考えた。

 

 

3年以内に取りなさいよという資格試験が4種あった。

 

銀行業務検定試験というやつだ。ちなみに種目がいくつもあって、

 

財務、税務、法務のそれぞれ2級と外為の3級。

 

年に3回受験するチャンスがある。

 

 

 

それを入行してから1年と2ヶ月で全て取ってやった。

 

合格発表と合わせて、

銀行内の電子掲示板にバーンと名前が載った。

 

 

気持ちよかった。

 

 

そして

 

特に実務においてこれといった実績を残したわけでもなく、

 

最初の支店よりは規模が大きくて

 

少し忙しいとされる支店に転勤になり、

 

3年目からいわゆる会社まわりの日々が始まった。

 

 

 

結果から先に言うと僕はこの支店でのミスが重なり、

 

1年3ヶ月で住宅ローンの専門部署

 

いわゆるローンセンターというところに

 

転勤を命じられた。

 

 

基本的に、一度支店に赴任すると、短くても2年は居るのが普通だ。

 

 

なのでみんな薄々気がついているだろう。

 

 

 

この異動が栄転ではないことに。

 

 

常に脳内で他者と闘っていた僕は

 

その全てに敗北し、

何人かはこちらを指差して嘲笑しているかのような

そんな思いがして

自分の中のプライドというプライドが

静かに崩れ去った。

 

 

続く。